腰椎すべり症について

腰椎すべり症について

中高年の患者様に多い、脊柱管狭窄症やヘルニアとセットで診断を受けることが多いのが腰椎すべり症です。

当院では腰椎すべり症と診断を受け「腰が痛い」「腰がだるい」「起き上がるのが辛い」といった症状でお悩みの方をサポートしています。

腰椎すべり症とは何か?

腰椎すべり症とはまさに「文字通り」の状態を指します。

腰椎が過剰に前方へ滑っている状態

これが起こりやすいのは腰椎3番(L3)です。

この腰椎3番は元々腰椎前弯の頂点に位置する腰骨なので、もともと前方へ滑っています。それが更に前方へ滑りこむのが腰椎に起こる「すべり」であり、その結果生じる様々な症状を「腰椎すべり症」としています。

脊柱管狭窄症が必ずセットになる

腰椎すべりと診断を受けた人はまず「脊柱管狭窄」もセットで診断を受けるはずです。それは腰椎が前方へすべることによって、脊髄中枢神経を通している脊柱管に歪み(狭窄)が生じるからです。

ですので、同時に診断を受けても別に驚くことはありません。出るのが普通です。

MRIの状態によっては「椎間板ヘルニア」をさらに追加で診断される場合もありますが、それも結構多いので余り気にしないで下さい。

腰椎すべり症の症状

腰椎すべり症の代表的な症状は脊柱管狭窄症と共通しています。

「すべり」と「狭窄」は同時に起こるのでそれ自体は当然なのですが、肝心なのは「腰椎すべり」が原因で起こっているのか「脊柱管狭窄」が原因で起こっているのかを判断できない事です。

恐らく正確な区分けがされる日は永遠に来ないでしょう。

患者さんへの大規模聞き取り調査による「主観的な統計データ」が限界だと思います。

とりあえず、一般的に言われる腰椎すべり症の症状を以下に紹介します。

  1. 腰が痛い
  2. 腰を曲げると引っかかる
  3. 腰が曲がらない、折れない
  4. 腰を伸ばすと痛い
  5. 腰が重たくてだるい
  6. 腰から下が重たくてだるい
  7. 身体を動かしにくい

基本的には慢性的な腰痛と殆ど一致しています。脊柱管狭窄症でみられる「しびれ」「神経痛」「感覚の鈍麻」「麻痺」「頻尿」「失禁」といった症状は腰椎すべり症では「相当な重症」とされます。

すべりから脊柱管狭窄を起こし、神経が圧迫されているという論理です。

なので、「腰周辺に残る違和感」全般が腰椎すべり症の代表的な症状と理解してください。

ただ、臨床の立場からするとそれが「腰椎すべり症」なのか「脊柱管狭窄症」なのかは余り関係がありません。ですので、診断名には余り拘らなくて良いです。

腰椎すべり症の対処法

腰椎すべり症の対処法ですが、自宅で取り組めることが沢山あります。

当院で腰椎すべり症を克服する事も勿論可能ですが、まずは自宅で取り組んでみるのが良いかと思います。

1.姿勢改善

腰椎すべり症は極論すると「姿勢の歪み」に過ぎません。背中が突っ込み、お腹が出っ張り、ドナルドダックみたいなお尻になっているだけです。

これは欧米人にとっては普通の姿勢なのですが、私達アジアの人間には少々不自然な姿勢です。腰への負担が非常に大きくなります。

ですので、本来のアジア系の姿勢に戻してあげる事で腰椎すべりの状態を改善し、腰椎すべり症の症状を改善する事が大切になります。

日常の姿勢は「日常の生活」によって作り上げられているものなので、ほんの少しの「変化」を生活に投げ込んであげる事がポイントです。

2.腹筋強化

腰椎すべりを引き起こす「滑り姿勢」は腹筋の抜けが特徴的です。とにかく日本人の腹筋は綺麗に抜けていることが多く、お腹のコルセットが消えてしまったことによって、お腹全体が前滑りを起こします。

その前滑りに引っ張られる形で「腰骨」も前方へとさらに滑ってしまい、腰椎すべり姿勢が完成します。

ですので、これを防ぐためにも腹筋群をしっかりと使う習慣を取り戻すことが大切です。昔は日常生活で使っていた筋肉ですが、今は中々「しっかり使う」機会が見当たりません。

ですので、少し意識をして1日の中で使う時間を作ってあげましょう。「使わない時間」があまりに長すぎるのが問題の本質なのです。

3.運動習慣

腰椎すべり症では「腹筋抜け」と同じくらい「臀筋抜け」の状態が生じています。

これを改善させるには「運動習慣」が一番です。

腰椎滑りは現代病の一つといえるのですが、それは「運動不足」と「肥満」のダブルパンチが生じやすいからです。肥満によって腹部の皮下脂肪は増え、運動不足によって腹筋抜けと大殿筋抜けが生じることで一気に腰椎すべりの環境が整います。

このダブルパンチを同時に改善させる方法が「運動習慣」です。

ウォーキングなどで十分ですので「まずはここから」といった軽い気持ちで運動を始めてみてください。人間の体は「変化には変化」で必ず返事をしてくれます。

変化の大小は刺激の大小に比例します。変化が全くないのは「変化を感じられないくらい感覚が鈍っている」のか「変化があまりに小さい」かのどちらかです。変化が全くないというのは人間の体に限ってはあり得ません。