脊柱管狭窄症のお話し

50代以降の腰痛で非常に多くの診断を受ける「疾患名」が脊柱管狭窄症です。臨床での感覚ですが、明らかに椎間板ヘルニアの診断数が減り、この脊柱管狭窄症の診断を受ける方が増えています。逆に椎間板ヘルニアの診断で治療を受けている人を探す方が難しいくらいです。

その1:脊柱管狭窄症って何だろう?

脊柱管狭窄症とは疾患名そのまんまです。「脊柱管」が「狭窄(狭くなる)」する事で起こる「症状」が脊柱管狭窄症となります。

脊柱が狭くなって起こる症状はほぼ全て「脊柱管狭窄症」です

まずは簡単に脊柱と脊柱管の説明から入りたいと思います。脊柱とは背骨の事をさしていますが、その脊柱の中にある「脊髄中枢神経の通り道(トンネル)」が脊柱管となります。このトンネルは非常に狭く、構造上脆いです。24本の背骨が積み重なってできているトンネルなので常に動きがあります。ただ、押せば崩れるという訳でもなく、骨と骨の間には「靭帯」という結合組織がありますので「プチン」と切れたりすることはまずありません。

ちょっと乱暴な例えですが、吊り橋みたいなものですね。足下駄はそれぞれ動きますが、しっかりロープやワイヤーで結ばれているので動きは常に一定の範囲で収まります。背骨とは正にそのような感じです。

昔はヘルニア、今は脊柱管狭窄症が多くなりました

昔はヘルニア診断が年齢問わず本当に良く出ていました。院長も20代半ばでヘルニア診断を受けました。それが今は脊柱管狭窄症として診断をされる人が非常に多いです。診断名が異なるので当然処方される薬も変わってきました。昔は「抗炎症剤」が多かったのですが、最近は「血液をサラサラにする薬」が処方されています。

どうしてここまで大きな変化が生まれたのかはわかりませんが、他の先生に聞いてみても同じ傾向が見られるそうなので時代の流れなのかなと思います。診療ガイドラインの変化なのでしょうね。

若いと「ヘルニア」の診断になるケースが多いかも

ヘルニア診断が減り、脊柱管狭窄症の診断が増えてきたと述べましたが、20代~30代の場合は「脊柱管狭窄も見られるヘルニア」という診断を受ける場合もあるようです。臨床の感覚から言うと「40代」が一つの境界線になっているようです。40代からヘルニアを診断をされる人が極端に減ります。殆どの患者様が「脊柱管狭窄症」の診断と「血液サラサラの薬」がセットとなっています。

その2:脊柱管狭窄症はどうやって起こるのか?

この40代以降に診断される傾向が一気に高くなる脊柱管狭窄症ですが「私は脊柱管狭窄症らしいです」という様に診断名までで認識が止まっている人が殆どです。具体的な脊柱管狭窄症についての情報が手元に無い状態です。やはり早期の改善を図るには「身体の状態と疾患の理解」はとても大切になってきますので自分の身体についての情報はしっかり把握しておきましょう。

すべり症やヘルニアによるものが多い

おさらいとなりますが「脊柱管狭窄症」とは以下の通りです。

  • 脊髄中枢神経の通り道である「脊柱管」が狭くなる
  • 脊柱管が狭くなる状態を「脊柱管狭窄」と呼ぶ
  • 脊柱管狭窄の状態は様々な症状を引き起こす
  • 脊柱管狭窄が原因で起こった諸症状全般が「脊柱管狭窄症」と呼ばれる
  • 代表的な症状が歩行障害の間歇跛行
  • 背中を反ると痛みが増し、背中を丸めると痛みが治まる

良く「脊柱管狭窄症は腰を掛けると痛みが治まる」という表現がされますが、実際は腰を掛ける事ではなく「背中を丸める」事によって痛みが治まるケースが多いです。腰かけても背中を伸ばすと痛みや引きつりが起こるケースは多いのです。

で、この脊柱管狭窄症の原因である「脊柱管狭窄」なのですが、これを起こすのは「腰椎のすべり」であったり「椎間板ヘルニア」であったりが多くなります。

とにかく「脊柱管狭窄の原因は沢山ある」という事だけは覚えておいてください。脊柱管狭窄症はもっと掘り下げないと「本当の原因」が見えてこない疾患なのです。

腰椎症、椎間関節障害も似たようなもの

脊柱管狭窄症とは違いますが「腰椎症」や「椎間関節障害」と呼ばれる疾患や症状も似たようなものです。腰椎症とは腰椎に「骨棘」などの変形が起こり背骨の位置関係が狂う事で起こる症状を指します。腰椎が原因で起こるから腰椎症です。

そして椎間関節障害とは「椎骨と椎骨の間の関節」に異常が生じて起こる障害となります。これなどは歪んだ姿勢などによって椎骨の位置関係が崩れてしまい起こります。どちらの場合も結果的に「骨の位置・バランスが崩れる」事によって起こるものです。

お気づきになられる方もいると思いますが、脊柱管狭窄が起こるのは正に「骨の位置・バランスが崩れる」事が原因です。ですので腰椎症でも椎間関節障害の場合も、厳密には脊柱管狭窄が起こっているといえるのです。

脊柱管狭窄は思っている以上に身近に存在しているものだと覚えておきましょう。

骨粗鬆症でも起こります

高齢者の場合は「骨粗鬆症からくる脊柱管狭窄症」も多いです。これは「骨粗鬆症による椎骨の骨折(圧迫骨折など)」によって椎骨の位置関係が狂い、脊柱管狭窄が起こってしまうケースです。この場合は崩れたバランスを立て直そうと「骨棘」が形成される事も多く、背中が曲がるなどの「姿勢の変化」が起こりやすいです。

脊柱の重心がずれると起こることが多いです

以上、脊柱管狭窄症の原因である「脊柱管狭窄」についての説明をしてきました。結局のところ「脊柱が狭くなる」というのは「姿勢が歪む=重心がずれる」事によって起こります。脊柱管は自然なS字カーブの状態で本来のトンネルが成り立つ様になっています。

なので、姿勢が歪んでしまうとその時点で脊柱管が曲がってしまうのです。つまり「脊柱管狭窄」とは「歪んだ姿勢」が当たり前になっている現代社会においては「ありふれたもの」だと考えましょう。デスクワークをしている人、運動不足の人は例外なく「脊柱管狭窄」の予備軍なのです。

その3:脊柱管狭窄症の治療法は?

脊柱管狭窄症の治療法についてですが「治療行為」を行えるのはあくまで医師となります。ですのでここでは主に病院で行う脊柱管狭窄症の治療についての紹介となります。

中高年の場合は「血液サラサラ薬」が一般的です

脊柱管狭窄症の患者様が処方されるのは「血液サラサラ薬」と呼ばれるものです。主に血小板の働くを抑えるタイプですね。つまり脊柱管狭窄症の治療は「狭窄部位の血流障害を取り除く」という事になります。この薬で実際に痛みが改善された患者様は非常に多いですから、脊柱管狭窄症の「痛みの原因」は「血流障害」が大きな要素となっているのは間違いないでしょう。

唯一のネックは「薬を飲み続けるケースが多い」という事です。血液を常にサラサラにしておかないと痛みが取れないという状況は「終わりが見えない」点においてはストレスになることが多いです。

手術は生活に支障をきたしている場合に限ります

今は昔ほど手術を選択することは少なくなってきたかと思いますが、症状が重い場合には手術選択をされるケースもあります。脊柱管狭窄症の場合は「開窓手術」という「椎骨を削って脊柱管を物理的に広げる」という方法が取られます。

脊柱管狭窄が取れるので症状が一気に改善する事も多いですが、削り取った骨は再生しませんので補強用のプレートを入れる形になります。その為、背骨の運動性がある程度落ちてしまいますので最後の手段として考えるべきでしょう。

若い世代は「ヘルニア」「すべり症」の診断が出ることが多いみたいです

若い世代でも脊柱管狭窄症は起こります。ですが診断名は「椎間板ヘルニア」や「すべり症」「腰椎症」といった形に落ち着くことが多いようです。どうして年代別ではっきりと分かれるのかはわかりませんが、医療業界全体でそういう流れになっているようです。

※恐らく診療ガイドラインに変化が出たのだと思います。

その4:自分でできる脊柱管狭窄症の対処法は?

脊柱管狭窄症の治療は医師によって行われるものです。ですが、脊柱管狭窄症の症状を改善させる為の取り組みは自宅でも可能です。言葉遊びになってしまうのですが「治療行為は医師が行うもの」なので自分で取り組む方法は「民間療法の一つ」になります。

私達患者からすれば「この症状が楽になるなら何でもいい」というのが正直なところなのですが、ここら辺の細かい言葉を気にされる方も多いので解説しました。

方法1:体重のコントロール

ぎっくり腰や椎間板ヘルニア、腰椎すべり症なども同じです。体重コントロールの効果は本当に高いです。嘘みたいな話ですが「痩せただけで治った」という人は沢山います。これは決して大袈裟な話ではありません。それだけ背骨には体重による負担が掛かっているという事なのです。

また体重が軽くなる事によって脂肪細胞が縮小し、血管を圧迫する要素が減ります。それはそのまま血流促進に繋がりますし、血中脂肪の減少は「血液サラサラ」効果ももたらしてくれます。体重をコントロールするという事は本当に健康効果が高いのです。

方法2:運動習慣の改善

体重のコントロールに肩を並べる高い効果を期待できるのが「運動習慣の改善」となります。体重コントロールは脂肪量のコントロールとなりますが、運動習慣の場合は「脂肪燃焼」に加えて筋ポンプの活用による「血流促進効果」が大きくなります。

体重コントロールとは違ったアプローチでの脊柱管狭窄症の改善となりますので、両方の方法を並行して行うのが理想的です。どちらか一方に偏った取り組みをするよりも「5:5」の割合で取り組みましょう。

但し、間歇跛行などが起こっている場合は無理に取り組む必要はありません。その場合はまずは体重調整から入り、間歇跛行が収まってきた段階で少しずつ「できる範囲」で運動をしていきましょう。脊柱管狭窄症の改善で効果的な運動は「水中ウォーキング」や「ノルディックウォーキング」です。

方法3:腹圧の強化

脊柱管狭窄が起こる原因の一つは「腹圧の低下」です。いわゆる「お腹の筋肉コルセット」が十分に働けなくなってしまう事で腰が不安定となってしまうのです。不安定な腰は筋肉のバランスを失っていますので徐々に姿勢は歪み、脊柱管は狭窄を起こしてしまいます。

そこで「弱った腹圧を強化する」事によって腰の安定性を取り戻し、脊柱の安定性を戻してあげるのです。脊柱が安定する事によって脊柱管が狭窄を起こす理由が一つ減る訳ですので脊柱管狭窄によって起こっていた症状は改善をみえる事があります。

一つの要素の改善で「症状が全部消える」という事は少ないですが、自宅で取り組む場合は考えられる要素を一つ一つ変えていく事で「改善を積み重ねていく」事が大切です。

方法4:足腰の強化

脊柱管狭窄症が起こる原因の一つに「足腰の弱さ」があります。特に股関節周辺の筋力不足であったりバランスの崩れが目立ちます。股関節が弱ってしまうと必然的に膝関節にも影響は及んでしまいます。そして股関節と膝関節の問題はそのまま腰の安定性にも大きな影響を及ぼしてしまうのです。

ですので、腰の不安定性を改善させる為にも股関節~膝関節までの足腰をしっかりと強化する事は大切です。但し、脊柱管狭窄症は間歇跛行といった歩行障害が起こるケースが多いので「身体と相談をしながら取り組む」事が大切です。

とはいえ、間歇跛行が起こっているから「何もしない」という状態では今度は「廃用性萎縮」という現象が起こります。いわゆる「筋肉のリストラ」と呼ばれるものです。人間の身体はとても良くできており、「使わない筋肉=不要な筋肉=エネルギーを浪費するだけの無駄」という判断をしてしまいます。

その判断が下りるとどれだけ鍛え上げた筋肉であってもどんどん分解されてしまうのです。そうなると今度は「身体を動かすのが大変」「腰の安定性が更に崩れる」という二次災害の様な状況になってしまいます。ですので脊柱管狭窄症は向き合い方がとても難しい疾患と言えるでしょう。

効果的な足腰強化運動を2つご紹介します

歩行をするにはまだ不安が残っているが、足腰の廃用性萎縮も怖い。そんな時に取り組みやすい足腰強化があります。それは

  • 「ノルディックウォーキング」
  • 「水中ウォーキング」

の二つです。脊柱管狭窄症の改善、リハビリにはこの二つがとても効果的で安全です。

詳細は別途行いますが、水中ウォーキングは

  • 「重力の負担が解消される」
  • 「水圧による加圧効果」

という二つの要素が加わります。つまり負担が軽くなったうえに疑似的に腹圧を外からかけてもらえるのです。更には水の抵抗で筋肉の動員が増加しますので脊柱管狭窄症にはとても良いリハビリとなります。

もう一つのノルディックウォーキングはポールを使う事によって「疑似的な4足歩行」を実現します。普通の歩行では腰下でのみ支えていた上半身の体重を両腕でも支える形になりますので、腰骨~股関節~膝関節に掛かっていた負担を減少させることができます。

また両腕の前足化によって「腹圧」がより作られますので腰の安定性が増加します。通常のウォーキングとは完全に別物の運動となるのです。安全性と運動効果を高いレベルで実現できる非常に優れた運動法です。